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ライティング

卓越級      |      超級      |      上級      |      中級      |      初級

まえがき

ACTFL言語運用能力ガイドライン2012年版—ライティング(書く技能)は、運用能力の五つの主要レベル—「卓越級(ディスティングイッシュ)」「超級」---「上級」「中級」「初級」---を定めている。各主要レベルの記述は、一定の幅を持つ能力の代表的なものである。これらの主要レベルは、上下階層を形成しており、各レベルは、それぞれの下のレベルのスキルすべてを包括している。主要レベルのうち、上級、中級、初級は、さらに上・中・下三つのサブレベルに分かれている。

ガイドラインは、書き手が各レベルにおいて扱うことができるタスク、また各レベルのタスクに応じた内容、コンテクスト、正確度、文章のタイプを定めている。それら記述は、書き手が、すぐ上の主要レベルの機能がどこまでこなせるかをも提示している。

これらガイドラインは、プレゼンテーション型の伝達行為(随筆、報告、手紙)、あるいは、対人交流型伝達行為(インスタントメッセージ、Eメール、携帯メール)などで書かれる文章タイプを説明するのに使用することができる。さらに、ガイドラインは、その場で書かれたもの(即時のもので、校正なし)や推敲して書かれたもの(修正や校正したもの)に適応することができる。

ライティング能力の記述は、オンラインを通して各主要レベルの特徴を示したサンプルが付けられている。

ACTFL言語運用能力ガイドライン2012年版—ライティング(書く技能)は、 非営利目的、教育目的のみに使うことができる。ただし、使用の際は、どこも変えることなく、原文のまま復元・引用されること、また、ACTFLの著作であることを明記すること。


卓越級(ディスティングイッシュ)

「卓越級(ディスティングイッシュ)」レベルの書き手は、公的通信文書、意見表明文書、刊行誌の記事などのフォーマルな文章を書くタスクをこなすことができる。このレベルの書き手は、専門分野、学術的、社会的な論題について分析的に書くことができる。加えて、「卓越級(ディスティングイッシュ)」レベルの書き手は、国際的な問題を、かなり概念化され抽象性の高いかたちで取り扱うことができる。

これらの書き手は、具体的な技術として、説得力のある文章や仮説を展開する文章を使って、自分自身が必ずしも同意していない立場を推奨することができる。また、微妙な意味合いやニュアンスを伝達することもできる。「卓越級(ディスティングイッシュ)」レベルの文章は、洗練された文章で、教養のある読み手に向けられたものである。このレベルの書き手は、読み手を意識して書いており、自分の言語を読み手に合わせることができる。

「卓越級(ディスティングイッシュ)」レベルの文章は、難解で複雑だが、表現が簡潔であるという特徴もある。文章は、精巧に作り上げられ、目標文化圏の思考パターンを反映した形で構成してある。「卓越級(ディスティングイッシュ)」レベルでは、文章の長さは、決定的な要因ではない。また、その文章は、一遍の詩のように短いものもあれば、学術論文のように長い場合もある。

「卓越級(ディスティングイッシュ)」レベルの書き手は、 複雑な語彙、文法、構文、目標言語の文章スタイルにおいて高い熟達度を有する。文章の構成と句読法は、表現したいことをまとめるためだけでなく、その精度を高めるために意図的に使用される。文章を書く様式は、文章形式と目標文化にかなった適切なものである。

 

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超級

超級レベルの書き手は、社会的な話題、学術関係の話題、専門分野の話題といった様々な話題について、フォーマル、インフォーマル両域におけるほとんどの種類の通信文書、詳細な要約、報告、研究論文を書くことができる。また、論題の扱い方は、具体的なレベルを超え、抽象レベルに達する。

超級レベルの書き手は、複雑な事柄を説明したり、納得できる議論と仮説を展開することによって、意見を提示し裏付ける能力を有する。また、話題の論じ方は、構文、語彙、書き方の決まりを効果的に使うことにより、精度が高められている。さらに、論点をうまく構成したり、配列を工夫したりして、読み手に何が重要であるかを伝達することができる。構成力と議論の掘り下げ(因果関係、比較、時系列など)によって、論点と論点の間の関係は、一貫して明瞭である。このレベルの書き手は、話題を広範囲に展開することができ、そのため、通常、少なくとも複数の段落を要するが、何ページに及ぶこともありうる。

超級レベルの書き手は、文法構文、一般・専門の両分野に関する語彙、文字表記、接続表現、句読点について高いレベルの熟達度を有する。このレベルでの語彙は、的確かつ種類が豊富であり、読み手に向かって文章を書いており、文章の滑らかさ(スムーズさ)によって、読み手は容易に読むことができる。

超級レベルの書き手は、通常、目標言語の文化的パターン、構成パターン、スタイルについては熟達していない。超級レベルでは、パターン化した誤りは見られないが、特に低頻度の構文についてはまれに誤りを起こすこともある。そのような誤りがあったとしても、解釈に支障をきたすことはなく、母語話者がそれによって混乱させられることは稀である。

 

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上級

上級レベルの書き手は、よくある型通りのインフォーマルな通信文やいくつかのフォーマルな通信文を書くことができ、また、物語り文(ナラティブ)、描写、事実的な内容の要約を書くといった能力が特徴である。このレベルの書き手は、明確に伝えるために、言い換えや詳細な説明を使って、現在、過去、未来の主要時制枠で順を追ってできごとを語ったり、描写したりすることができる。このレベルでは、書き手は、最も頻度の高い構文や一般的な語彙をよく習得しており、そのため、非母語話者の文章に慣れていない者にも理解してもらうことができる。


上級の上

「上級—上」の書き手は、高度な正確さと詳しさをもって幅広い話題について書くことができる。また、適切な文章形式に従ってインフォーマル/フォーマルな通信文を処理することができる。事実に関した要約や報告を書くことができ、特定の関心事や知識を有する特別分野に関する話題について広範囲にわたって書くことができるが、それらの話題について具体的な部分を強調する傾向がある。「上級—上」の書き手は、アスペクトを安定して使いこなしながら、主要時制枠を使って、順を追って語り(ナレーション)、描写することができる。さらに、議論を展開したり仮定を構築するといった超級レベルのタスクを処理する能力もあるが、幅広い範囲の話題について、抽象的にあるいは一般的に論じつつ超級レベルの文章を一貫して産出することが常にできるというわけではない。このレベルの書き手は、幅広い文法構文とかなり広い範囲の一般的な語彙を習得している。上級レベルで書いているときは、非常に容易に表現するが、超級のタスクを提示されると、パターン化した誤りが生じる。「上級—上」の文章には、言語的限界があるため、時に母語話者に混乱を生じさせることもある。

上級の中

「上級—中」の書き手は、一定の範囲で仕事や学校に関した文章を書くことができる。アスペクトをある程度習得し、主要時制枠において、物語り文(ナレーション)を書いたり、描写したりする能力を有し、一般的な関心事項の話題について簡単な要約を書くことができる。このレベルの書き手の文章は、複数の段落にまで及び、接続表現の種類も豊富である。もっとも頻繁に使われる目標言語の構文や一般的な語彙の幅においても高い習得が見られる。ほとんどの場合、自分の考えは明確に表現され、いくらかの詳しい説明によって、裏付けられている。このような文章には、目標言語と第一言語両方からの文章構成の要素を取り入れ、時には口語的になることもある。「上級—中」レベルの文章は、非母語話者の文に慣れていない母語話者にも充分に理解される。超級レベルの機能を遂行したり、超級レベルでの問題を扱う場合、「上級—中」の書き手は、書き方の量と質、あるいはそのいずれかにおいて、低下を見せる。

上級の下

「上級—下」の書き手は、仕事や学校などに関する基本的な文章を書くことができる。アスペクトをある程度コントロールしつつ、主要時制枠において、物語り文(ナレーション)を書く能力、また、描写する能力を有する。このレベルでは、知っている話題について簡単な要約を作成することができる。「上級—下」の書き手は、文を組み合わせたりつなげたりして、段落の長さと構成を持った文章にすることができる。その文章は、上級レベルの基準を満たしているものの、十分とは言えない場合もある。「上級—下」の書き手は、限られた数の接続表現を取り入れることができるが、重複や不自然な繰り返しに陥ることもある。スタイルにおいては、口語の談話や第一言語の文章スタイルに依存する。上級レベルによく見られる構文や語彙についての習熟度は、最小限にとどまる。このレベルの文章は、読むのに多少の努力を要することもあるが、非母語話者の文章に慣れていない者に理解してもらえる。超級レベルの機能を遂行する場合、このレベルの書き手の書く力は著しく低下する。

 

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中級レベル

中級レベルの書き手は、簡単なメッセージや手紙、情報の依頼、メモといった実用的な文章のニーズを満たす能力によって特徴づけられる。さらに、文章で、簡単な質問を聞いたり答えたりすることもできる。このレベルの書き手は、自分の興味のある話題や対人交流のニーズについて、ゆるやかなつながりで連ねられた文で、自分なりのメッセージを創造したり、簡単な事実や考えを伝えたりすることができる。このレベルの書き手は、主に現在形で書く。また、非母語話者の文章に慣れた人が理解できる程度の意味内容を表現するのに必要とされる基本的な語彙と構文を使用する。


中級の上

「中級—上」の書き手は、中級レベルで規定されている実用的な文章のニーズをすべて満たすことができる。さらに、仕事や学校での経験に関連した文章や簡単な要約を書くこともできる。毎日の出来事や状況について書く場合、異なる時制枠を使って、順を追って語ること(ナレーション)ができ、また、描写することができる。これらの語り(ナレーション)や描写は、常にとは言えないが、たいてい段落の長さのものであり、通常、上級レベルでの基準のうち一つ以上にブレークダウン(挫折)が見られる。例えば、適切な主要時制標識の使用に矛盾があるなどして、明確さに欠けることもある。「中級—上」の書き手の語彙、文法、スタイルは、根本的に話し言葉のものに相当する。「中級—上」の文章は、間違いが多かったり、また、かなり大きい間違いをすることもあるが、非母語使用者の文章に慣れた母語話者におおむね理解される。しかし、誤解も生じやすい。

中級の中

「中級—中」の書き手は、多くの実用的な文章を書くことができる。このレベルの書き手は、ゆるやかにつながった文章で、自分の好きなこと、日常の活動、よくある出来事、その他の個人的な話題について、短く簡単な通信文や、作文、情報の依頼などを書くことができる。「中級—中」の文章は、現在形がほとんどだが、他の時制の表現が見られる場合もある。文章スタイルは、口語的談話に非常に似ている。「中級—中」の書き手は、基本の文法構文や動詞形を使いこなす力を有していて、文章は、ばらばらの文や質問が漠然と連ねられた集合体の様相を呈している。何らかの意図をもって構成されたという形跡はほとんどない。「中級—中」の書き手は、非母語使用者の文章に慣れている母語話者に充分理解してもらうことができる。「中級—中」の書き手が上級レベルのタスクを処理しようとする場合、文章の質と量、あるいは、そのいずれかが、低下し、メッセージも不明瞭になることがある。

中級の下

「中級—下」の書き手は、ある程度限られた範囲の実用的な文章を書くことができる。このレベルの書き手は、習ったことばに基づいて、何かを述べたり質問を作ることができる。文のほとんどは、習った語彙と構文の組み合わせや組み替えとなっている。それらは、基本的な語順で、短く簡単な会話のような文である。また、ほとんどすべて現在形が使われる。文章は、同じ構文が繰り返され、二、三の単文から構成される傾向がある。話題は、かなり決まりきった内容と個人的な情報に関連している。語彙は、生活に必要な最小限のものである。文法、語彙選択、句読点、つづり、また、非アルファベット表記の表出や使用に、基本的な間違いもある。「中級—下」の文章は、読むのにかなりの努力を必要とするかもしれないが、非母語使用者の文章に慣れた母語話者に理解してもらえる。「中級—下」の書き手が、上級レベルのタスクをこなす場合、文章の質は、著しく低化し、伝えたいことも伝わらないままに終わる場合もある。

 

 

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初級

初級レベルの書き手は、主に単語や語句を使ってリストやメモなどを書くという能力によって特徴づけられる。このレベルの書き手は、簡単な書式や文書などで見られる限られた範囲の決まった情報を書き込むことができ、ごく単純なメッセージを伝達するために、練習したことを再利用して表出することができる。さらに、ある程度の正確さをもって、知っている単語や語句を文字で表したり、アルファベットやかなの文字を複写したり、基礎的な字を模写することができる。

初級の上

「初級—上」の書き手は、リスト、短いメッセージ、はがき、簡単なメモなど、限られた範囲で基本の実用的なニーズを満たすことができる。このレベルの書き手は、主に練習した表現に頼り、言語を学んだ状況設定の中で自分の意図したことを表現することができる。「初級—上」の文章は、日常生活によく出て来るものに集中している。「初級—上」の書き手は、習った語彙や文法構文を組み替えて、よく知っている話題について簡単な文章を作ることができるが、常に文レベルを維持することはできない。不適切な語彙と文法構文(またはそのいずれか)のため、このレベルでの文章は、書き手の意図したものが部分的にしか伝達されていないこともある。「初級—上」レベルの文章は、非母語使用者の文章に慣れた母語話者に理解してもらえるが、誤解が生じることもある。

初級の中

「初級—中」の書き手は、場面状況に応じて、暗記したものの中から、いくつかの単語や語句を書くことができる。このレベルの書き手は、簡単な書式や文書に、限られた範囲の情報や、その他名前、数字、国籍などの自分自身に関する情報を書くことができる。また、限られた量の決まり文句などを使って、練習を重ねてよく知っている話題について書く場合は、高い正確さを示すことがある。あまり知らない話題になると、正確さに顕著な低下が見られる。つづりや表記の間違いは頻繁に見られる。機能的に書く能力を示す形跡はほとんどない。このレベルの文章は、非母語使用者に慣れた人にも理解するのは難しい。

初級の下

「初級—下」の書き手は、見慣れたことばや語句を文字化したり、アルファベットの文字を表記したり、また、かな、表意文字を使用する言語においては、個々の基本的な形成画を複写することができる。適切な時間と知っている手がかりを与えられれば、限られた数の個別の単語や知っている語句を記憶から産出することができるが、間違いは当然予想される。

 

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